日本の経済問題と社会格差について考えてみた

ヘイへ―イ(Hej)

現在、スウェーデンに滞在して2か月が経ちました。

とても住みやすい街ですよー。

緑が多くて、素敵な伝統的建築も立ち並び。

ただ、近年のスウェーデンは、かつてに増して移民の流入が多く、これに関して政治の上でも後退気味な議論が起こっています。

殺人等の犯罪件数も増加しており、治安が悪化していますが、これは移民数の増加と安易に結びつけることが出来ない問題なので、置いておきます。

さて、高福祉社会と名高い北欧スウェーデンですが、当然ながら、あらゆる社会において社会格差や貧困は存在します。ここも例外ではありません!

特に、アフリカ系、中東系移民は、北欧社会にセーフティーネットが存在していても、そこからこぼれ落ち、スーパーで物乞いをしているのをよく見かけるのが現状です。

彼らの存在は、ネット記事やグラフの数値上では、ほとんど見出すことが出来ませんが、発達したこの国の社会保障制度によってさえも、貧困は依然として存在し続けるのです!

そんな彼らを見て、移民問題の実情こそ異なりますが、2023年現在世界GDP3位の大国日本でも、どれくらい格差は存在するのかが気になりました。また、停滞する国内の経済問題といい、上がらない賃金といい、原因はどこにあるのかを探ってみました。(引用はネットの記事のみです)

はじめに、私たちにとって関心が高く身近な話題として、「賃金問題の原因」について見てみましょう。

①日本の平均賃金は安く、世界22位です。(2020年時点)

あれ、日本って、GDP世界3位の国じゃなかったけ?国全体では世界トップレベルに稼いでいるはずなのに、なんで国民が貰えている給料は少ないの?

②そして、世界22位が示す平均年間所得は、424万円程度です。

ん? 思ってたより高くないか?

 

はい、ここで2つの矛盾が生まれました。①については、後ほど、内部留保労働分配率で解説します。

まずは②について考えましょう。「ジニ係数」という言葉を、高校の政経で習った方もいるかもしれません。簡単に説明すると、ジニ係数を使って、一国内における格差を表わすことができます。(雑な説明にご容赦を!特に数学科の方)資本主義が著しい米国や日本は、高福祉な北欧諸国と比べると、この数値が大きく、格差が大きいことが言えます。

「先進国において格差が大きい」、つまり、一握りの富裕層に富が集積しているということです。

次に、算数で習った中央値と平均値の求め方について復習しましょう。

例えば、10点満点の算数のテストで、1点、4点、10点を取った子たちがいるとしましょう。かれらの中央値は、真ん中の4点。4点をとった子は、この3人の中では中くらいに勉強ができると言えるでしょう。

では、平均値はというと、(1+4+10)÷3=5

平均値を人並レベルだとするならば、この3人の中で人並に勉強ができているのは、満点をとった10点の子だけになります。出木杉くん以外は勉強ができない子ということか?いいえ、このテストが異常に難しかった説も考えられます。この場合、平均値は使い道がありません。

話しを戻します。格差が大きい国では、平均値用いても、それが人並かどうかは測れません。中央値と平均値に差があるからです。だから、実際の給与より、平均値の方が高く感じられるんですね。

 

ふぅ、一息。スウェーデンでは、フィーカという、コーヒーブレイクの文化があります。職場や家庭で、同僚や家族とコーヒー片手におしゃべりをする小休憩。時にはシナモンロールやチョコ菓子なんかも添えて。これがスウェーデンの日常です!大好きフィーカ!

 

①について。

まず、平均賃金が諸外国と比べて低いと、私達にどんな不利益があるのか。例えば、物価が安く賃金が安いとなれば、特段困らないでしょう。しかし、日本が多くのものを輸入に頼っている以上、海外から入ってくる物の値段が上がっているのに、日本で値段が上がらないはずはありません!

身近な例が、ガソリン代、電気代(原油天然ガス)、小麦の高騰です。因みに、日本の食料自給率は38%のみ(カロリーベース)。家畜(乳製品)の餌や野菜の肥料の多くが海外輸入であることを考えると、さらに自給率は低くなります。目に見えていないところで、海外とは複雑かつ密接な繋がりをしているのです!戦争や気候変動によって輸入が途絶えることを想定すると、食において日本は危険な状態にあると言えます。

ではなぜ、GDPは高いのに、平均賃金はそれでも低いのかについて。

一つに、起業の内部留保が多く、労働分配率が下がっていることが挙げられます。

内部留保というのは、企業の実質的な儲け分のことです。つまり、総売上から税金や経費等を除いた金額になります。企業全体の売上が伸びれば、社員の給料も当然上がると思いがちですが、日本の現実は違います!

ここ数十年、日本の経済は伸び悩んでいるとは言え、企業の経営利益(特に大企業)は増大しています。にも関わらず、賃金は上がりません。なぜなら、増大した利益は、従業員に還元されず、会社に溜まっていく、つまり「内部留保が増している」からです。

加えて、企業は正規雇用率(社員)を年々減らし、非正規雇用率(主にパートやアルバイト)を上昇させることで、「安い賃金」と「乏しい福利厚生」で労働力を得ることができます。これを、「労働分配率が下がっている」と言います。人件費を大幅に削減でき、企業の利益には都合が良いですが、その代わり私たちの生活は困窮していきます。

 

では、この現状を打開する道はないのでしょうか。

私は、「教育」が一つの手段だと思います。

日本の経済が低迷している一つの理由に、対内直接投資の低さが考えられます。これは、海外からの投資(外資)が十分に得られていないことを意味します。(OECD加盟国の中で、日本の対内直接投資は対GDP比で最下位)

海外投資家たちからは、日本には成長企業やユニコーン企業が少ないから将来可能性に魅力がないと思われてしまうのでしょう。また、日本で事業をしようにも、言語の壁があって現地の日本人を雇えないとも考えられます。

Spotify発祥の国・スウェーデンでは、学校で起業教育が行われたり、国民全体の高い英語運用能力も相まって(母国語はスウェーデン語)、人口一千万の小国でありながら、日本の2倍以上の対内直接投資(金額ベース)を得ています。日本の今後の避けて通れない人口減少を鑑みると、日本もこれ以上は国内消費に頼れず、そろそろ海外に舵を切る時期です。そのためには、国家予算、企業の人的投資ともに、日本も海外水準の大幅な教育費を投資する必要があります。

日本は国家、企業ともに、この予算分野において、あまりにも教育を蔑ろにし過ぎです。教育は、短期的な利益には繋がりませんが、文字通り、将来への投資です。日本経済の将来可能性に展望が見いだせないと海外投資家らから見なされないためにも、教育に積極的に予算を回し、国民の教育機会を重視するべきです。労働人口減少が避けられない中においては、「労働生産性」(一人あたりの生産性)をいかに高められるかが命運を分けます。残念ながら、日本は諸外国と比べて労働生産性が低いです。日本人の能力が低いとは思いたくはありませんが、IMFの世界経済見通しで、日本がドイツにGDPを追い抜かれるだろうことを考えると、これを完全に否定することはできません。

 

教育分野においてもう一つは、資産運用です。日本の家計の金融資産は、2000兆円を超えました。(2021年)国家予算が114兆円であることを鑑みると、国家予算の十何年分でしょうか(笑)(ちなみに、日本企業の内部留保額の総計は、国家予算の4倍です)

日本の現預金の莫大さは、諸外国と比べてもあまりに多すぎます。もちろんデメリットばかりではありませんが、経済で回っていない金(死金)であることは否めません。

大企業経営者が内部留保を増大させる保守的な姿勢も問題です。労働分配率を底上げし給料を上げ、更に国民は金融リテラシーをもって投資する価値を学ばなければなりません。米国が、幼児期から一貫して金融教育を行っていることを考えると、私たちがそれを受けられていない現状は、文字通り「機会損失」と言えます。(高度経済成長期は終わり、預貯金礼賛の時代は終わりました)

 

以上、日本経済と個人の関係について、その問題と解決の見通しを考察しました。

 

参考文献:

ジニ係数とは?日本と世界の比較や計算方法をわかりやすく解説 | SDGsコンパス

安いニッポン! なぜ賃金は上がらないのか? NHK解説委員室

食料自給率 なぜ日本は低いのか 38%で大丈夫?|サクサク経済Q&A|NHK

RIETI - 消費税率引き上げは賃金の着実な底上げの好機

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/kaigi/dai3/shiryou1.pdf

政府も関心を寄せる「内部留保」の現状と課題を過去記事で学ぶ:日経ビジネス電子版

第3-2-7図 内部留保と現預金保有に関する国際比較 - 内閣府

進まぬ賃上げに「内部留保課税」が再び浮上?:日経ビジネス電子版

対内直接投資倍増は実現できるのか |ニッセイ基礎研究所

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